吃音と小学校生活

吃音の子どもが学校生活の中でつまずきやすいことと対処法をまとめました。親がしてあげられるのは、子どもが楽しく充実した学校生活を送れるよう支援すること。やみくもに学校に配慮をお願いするのではなく、子どもの気持ちに寄り添ってサポートすることが大切です。


吃音であることを学校に伝える

本題に入る前にお伝えしておきたいことがあります。それは、子どもが吃音であることを、しっかり学校に伝えてほしいということです。子どもが吃音であることを学校側が把握しているとしていないとでは、担任の先生の対応が変わってきます。学校と家庭で「吃音」という情報を共有しておくことは、とても重要です。

音読

音読が苦手という吃音の子どもは少なくありません。吃音者にとって音読が難しい理由は2つあります。

①書かれている言葉を読まなければならない(言い換えができない)
②なめらかに読むことが求められる

日常会話であれば、発音しづらい言葉を回避することが可能ですが、音読ではできません。さらに、音読はつっかえずに読むことが良しとされるので、吃音がある人にとっては大きなプレッシャーとなります。

音読が上達する方法

音読がうまくなる方法はただ一つ、練習することです。次のポイントを押さえて、国語の教科書を繰り返し音読しましょう。

●多少つっかえても気にせず読む
●つまずきやすい箇所は重点的に練習する
●親が必ず聞いてあげる
●読み終わったら、すかさずほめる

吃音者でなくても音読ででつっかえることはあります。ですから、少しつっかえても気にせず、読み終わったらほめてあげてください。ほめておだてて何度も読んでもらいましょう。繰り返し読んでいるうちに、だんだんその文章に慣れてきて、どもる頻度が減ってくるはずです。上達がみられたら、もっとほめてあげましょう。苦手だと思っていた音読でほめられることは、子どもにとって大きな自信になります。

どうしてもスムーズに読めないときは

しかし、何度練習しても特定の言葉でどもってしまう、どうしてもはじめの言葉が出ない、ということもあります。そんなときは、その特定の言葉、または読みはじめの一文節を先生に一緒に読んでもらうようお願いましょう。誰かと一緒に読むと、どもりません。

自己紹介

お子さんは自分の名前をスムーズに言うことができますか? 言えるのであれば、この項目は飛ばしてください。言えないのであれば、サポートが必要です。

なぜ自分の名前でつっかえるのか

自分の名前がなかなか言えないというのは、吃音あるあるです。なぜ名前でつっかえるのかというと、自分の名前は言葉を置き換えられませんし、周りの人は言えて当たり前だと思っているからです。入学やクラス替え後は、自分の名前を言わなければならないことが何度もあります。お子さんが幸先の良いスタートを切れるよう、支援してあげましょう。

インタビューごっこで練習

名前がスムーズに言えるようになるには、練習するしかありません。しかし、ただ何度も名前を言わせるのは、お子さんにとって苦痛です。そんなときは、インタビューごっこをやってみてください。
やりかたは簡単。親が手でマイクのかたちを作り「お名前を教えてください」と言って、手のマイクをお子さんの方に傾けます。名前だけを聞くのは不自然なので、ほかにも「今日楽しかったことは?」「最近面白かった本は?」など、いくつか質問します。これを毎日やります。すると、お子さんは1日1回は自分の名前を口に出して言うことになります。はじめはつっかえてもいいので、自分の名前を言うことに慣れましょう。

名前を言えるようになるテクニック

何度練習してもスムーズに言えるようにならない、親以外の人に名前を聞かれるとスムーズに言えなくなる、という場合は、次の方法を試してみてください。やってみてお子さんに一番合うものを見つけましょう。

●「はい伊藤太郎です」のように、名前の前に「はい」をつける
●「えー伊藤太郎です」のように、名前の前に「えー」「あー」をつける
●はじめの音(伊藤であれば「い」)を小さな声で言う
●「いーとう太郎です」と「い」をやや伸ばして言う
●大きく息を吸い、吐くタイミングで名前を言う

なお、「はい」「えー」を前につける場合は、「はい」「えー」の後に息継ぎをしてはいけません。「はい伊藤太郎です」を一息で言うようにします。

学芸会

学芸会で劇をやることになり、学年全員がセリフを言わなければならない場合、どうしてあげればいいのでしょう。

お子さんが学芸会を楽しみにしている場合

どのような役を選ぶかはお子さんに任せ、お子さんが任された役を全うできるよう、たくさん練習をします。
お子さんがセリフをつっかえてしまう場合は、次の方法を試してみてみましょう。

●おなかから声を出す
●振りをつけながら言う
●ゆっくり言う
●音を伸ばし気味に言う

「振りをつけながら言う」とういうのは、たとえば「あっち」というセリフだったら、大きく指をさしながら言うということです。ただ立ったりすわったりしたまま言うよりも、動きながら言ったほうがどもりにくくなります。

お子さんが学芸会を嫌がっている場合

お子さんがどもることを恐れ、学芸会に否定的なのであれば、まずはお子さんの話をじっくり聞いてあげてください。
そのうえで、もしお子さんがどうしてもセリフを言いたくないというのであれば、誰かと一緒にセリフを言う役にしてもらえないかを先生にお願いします。誰かと一緒に言えば、どもりません。そして、学芸会が終わったらたくさんほめてあげましょう。大きな舞台でセリフを言うことができ、親に褒めてもらえたというのは、お子さんにとって自信になります。

日直

日直の仕事の中で、吃音のある子どもが苦痛に感じるのが号令です。「起立、礼」などの決められた言葉をタイミング良く言わなければならないは、かなりのストレスです。

号令のコツ

号令の言葉をスムーズに言うためのコツを挙げました。自分に合う方法を見つけましょう。

●はじめの音を小さな声で言う
●ゆっくり伸ばし気味に言う
●誰かに一緒に言ってもらう

たとえば、「起立」の「き」の音が言いにくいのであれば、「き」を小さな声で言い、「りつ」を普通の声で言います。どうしても「き」の音が出ないのなら、「き」を言わずに「りーつ」だけでもOK。意外と気になりません。

 

今回取り上げた音読、自己紹介、学芸会、日直は、吃音をかかえるお子さんの多くが苦手としています。授業参観、先生やお子さんの話を通じて、自分の子どもがどれくらいできているのか、何を苦手としているのかを把握し、必要な支援をしてあげてください。



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