吃音の子どもに「自分はどうしてこんな話し方なの?」と聞かれたら

幼児期に自分の吃音に気づいている子どもはそれほど多くはありませんが、小学生になると「自分の話し方がおかしい」「言葉がつっかえる」ということに気づき始めます。友だちに「変な話し方」とからかわれることもあります。吃音を意識した子どもは、必ず一度は吃音について親に尋ねます。そのとき親はどのように答えたらいいのでしょう。



「気にするな」は禁句

子どもに聞かれたとき、返す答えは一つではありません。しかし、絶対に言わないでほしい一言があります。

それは、「気にするな」です。

ここで、私の経験をお話しします。私は、小学3年生のときに親に吃音のことを尋ねました。親の返答は「お父さんとお母さんは気にならないよ。だから気にしなくていいよ」というものでした。親はやさしさを見せたつもりだったと思いますが、私は大きく失望しました。「吃音」という悩みを解決するのに、親はまったくあてにならないということがわかったからです。これ以降、吃音について私が親に相談することはありませんでした。

子どもは吃音のことが気になっているから質問しているのです。そして、「なんとかしたい」「治したい」と思っています。それなのに、帰ってきた答えが「気にするな」では、ちっとも心が晴れません。

子どもの疑問に答える3つのステップ

では、どのように答えてあげればいいのか。私は3つのステップをふむのがよいと考えています。

1.子どもの状態を把握する

まずは、子どもが吃音についてどのくらい自覚しているのかを把握することからはじめます。次のようなことを聞いてみましょう。

●どのようなときにつっかえてしまうか(自分の名前を言うとき、音読、発表、日直、先生と話すときなど)
●言いにくい言葉はあるか(自分の名前、特定の単語、特定の音など)
●つっかえることを誰かにからかわれたことはあるか

ほかに吃音について聞いておきたいことがあれば、聞いてみてください。

2.「吃音」について教える

次に、子どもに吃音のことを教えてあげましょう。子どもが吃音のことを知り、親子で考えることができるいい機会になります。家庭内で吃音をオープンにしておくと、子どもは家で話しやすくなります。
「あなたのように言葉がつっかえたり、音が出なかったりする話し方を『吃音』と言うんだよ」
「吃音は話し方の癖の一つだよ。あなただけじゃなくて、みんな話し方の癖があるよ。お友だちや先生の話し方を観察してごらん。早口だったり、話し初めに「あのー」「えーっと」って言ったりして、何かしらの癖があるよ」
「わたしたちが話をするときは、頭で考えたことを口に出しているの。でもあなたは頭の回転が速いから、口がついてこれないんだよ」
このような感じで話をします。最後の言葉は、科学的に証明されているわけではありませんが、よく言われていることです。「吃音なのは頭の回転が速いから」と言われると、悪い気はしませんよね。このようなポジティブな気持ちになれる言葉も必要です。

3.アドバイス・提案する

最後に、子どもが安心できるような言葉をかけます。
「いつもよりゆっくり話してみてごらん。こんなふうに(親が戦場カメラマンの渡部陽一さんくらいゆっくり話す。ステップ1の質問でつっかえやすい言葉があると子どもが答えたら、その言葉を言う)。言ってみてごらん(子どもに言わせる)。ね、つっかえないでしょう」
「つっかえることがあってもいいんだよ。怖がらずにたくさん話していいからね」
「もしお友だちに聞かれたり、からかわれたりしたら、『こういう話し方の癖があるんだ』と答えるといいよ」
「言葉がつっかえることで困ったり、いやな思いをすることがあったら、いつでも話してね」

これまで言語聴覚士等への相談やことばの教室への通級の経験がないのであれば、行ってみることを提案するのもいいかもしれません。子どもが吃音を自覚したというのは、相談や通級のよい機会といえます。本人が吃音を治したいという気概があるならばなおさらです。

言語聴覚士のいる施設は、日本言語聴覚士協会のHPから検索できます(→こちら)。また、各自治体にある育児、教育、発達障害の相談窓口で情報収集することもできます。



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